2025年01月08日

お知らせ

久保田征孝 ~ こだわりの跳躍の先に ~

太陽の日差しが痛いほどの群馬の猛暑日にもかかわらず跳ぶエンターテイナー久保田選手の姿はいつもと同じようにグラウンドにあった。「今年の夏は特に暑い」そんな言葉が毎年聞かれるようになり、屋外での運動は危険を感じるほどである。そんな季節にも関わらず、週末に控えた関東選手権に向け「冬より夏が身体が動くのでいいですね。」と最も大切にしている助走部分の走りのチェックに打ち込んでいた。


直近にあった大きな大会として東日本実業団を振り返ると「模索期間の大会であった、感覚的には悪くなかったが全体的に精度が低かった」と語る。そんな中での記録は2M。自身の求める感覚に遠いとは感じなかった、その感覚に狂いはなく現在の調子を聞くと、間髪入れずの「絶好調です!今は自分の跳躍に関する一つ一つの動作を説明することが出来るようになった。」という。大きなけがを負い2年近く思いっきり跳ぶことが出来なかった、そんな期間を経て以前は自然と出ていた動きの一つ一つを1から作り出していく作業が必要だった。そして今はその作り上げた動きが自動化されるまでに仕上がってきたのだ。感覚を大事にする久保田選手がその感覚を裏付ける論理が出来上がってきたのだ。東日本実業団から基本的な動き自体は変えずに精度を上げることに取り組み、基礎的な能力の底上げによりその精度が上がった結果が絶好調を生んだ。そんな取り組みに確信を持つ跳躍が最近練習できた。感覚は「陸上人生の総まとめのような跳躍だった」と振り返る。


そんな跳躍が出るとモチベーションアップにもつながる、まさに久保田選手は現在絶好調超の状態にいる。この跳躍が選手人生最高だと位置づけるなら一番悪かった跳躍は?と問うと意外にも、自己ベスト更新した跳躍だという「あの時あのジャンプで記録が出たから今がある。あの記録が出ていなかったらもう競技はやめていた。」自分の中のハマった感覚がないままに自己ベストが出たが故にハマった時の自分が見てみたくなった。そんな矢先ケガを負った。そこからの長いリハビリ期間と模索期間がまた久保田選手を強くした。「この競技人生最悪の跳躍とした自己ベスト更新が良いものになるか悪いものになるかは今後の自分次第。」ラフな口調とは裏腹に専門的な返答の際には目つきが変わる。エンタメは側面であり、やはり生粋のアスリートが久保田選手の核となる部分だ。取材の中でルーティンやジンクスを伺った際、「何もそういったものを持たないのがザ俺!」とおどけていたり人生で影響を受けた存在も「特にない、他人に干渉しない。」常に自分の人生の選択は自分自身。それが久保田選手の強さなのかもしれない。こだわりの助走から一気にバーを飛び越える跳躍は観客を魅了するだけでなくその感覚が久保田選手自身を虜にしている。そんな久保田選手が競技を続けるうえで大事にしていることは、「考えることをやめない」一つ一つの動きを考え向き合い続け、あと一歩を責め続ける。そのこだわりが炎天下の中でもやめない直線とカーブの走り込みでトップスピードにもっていく感覚を養う作業だ。こだわりと探求心が垣間見える。


前回の取材で久保田選手にとって走り高跳びは?との問いに「期限付きの趣味」と答えた。今日はその趣味を満喫するためのポイントを伺うと「長い目で見ること」今日のこの跳躍、目先の結果にとらわれずその先に何があるかを見続ける。高校時代2m6㎝を跳んだ、そのころ今この時しか見られずコロコロといろんなことを変え軸を失った。そんな経験から学んだという。様々な経験を己の糧にする、蓄積した経験が久保田選手の最大の武器である。そんな久保田選手のアスリートとしての目標は、「納得して2m20を跳びたい。」そう語る目は理論を語る時とは違いただ走り高跳びに魅了され続ける少年表情だ。そして最後にしっかりYouTuber としてのメリットも振り返り、「リスナーの質問に答えたり、指導を仰ぎに来る選手もいる、その際の返答が自分の動きの説明ができるようになった要因の一つでもある。ストイックなアスリートな顔と気取らないエンターテイナーな顔その両面を持つことが久保田選手の最大の魅力であり武器である。こだわり抜いた先で、自身納得の跳躍が出来た時、そのバーを跳び超える感覚は記録にも何にもとらわれない最高のものになるだろう。追い求める久保田選手の物語は続く…。