2000年01月10日

お知らせ

中村哲也 ~後進育成~

SAGA2024国スポに群馬県陸上チームの監督として、4×100mリレーで見事群馬県に優勝をもたらしたのが中村哲也 副社長です。中村副社長は1994年広島アジア大会において同種目で40年ぶりの金メダル獲得に大きく貢献し、1999年にはセビリア世界陸上にも出場を果たした経歴の持ち主です。東海大学を卒業後は五輪出場を目指し日立の関連会社実業団チームに入部したが1996年にアトランタ五輪出場が叶わず、2000年シドニー五輪出場を目指すため新たな環境を求め登利平に入社しました。


登利平が抱えるアスリートクラブには現在7名の陸上選手が在籍しています。当時は女子マラソンの選手が1名所属しており、そこに中村副社長が加入し少しずつ人数も増え現在のアスリートクラブという形に発展していきました。登利平は、1953年の創業以来鶏料理専門店としてレストランと弁当販売で群馬県民の食を支えており、特にお弁当は現在年間400万食の販売を誇ります。地域の会合や運動会、スポーツイベントに欠かせないソウルフードとして広く愛されています。そんな登利平と県内陸上選手の強化という2つの組織の後進育成について伺います。


中村副社長の指導は「競技力がすべてではない。努力する姿や、周りの人に理解され応援される姿勢が大切だ。」と説く。競技生活よりも長いのはその後の人生であり、社会での成功を見据えた指導を行っている。登利平アスリートクラブの選手も仕事を早く切り上げ練習時間を確保することが出来るのは、一般の社員の理解と支えの元で実現できている。「社内での理解は深まっているものの、本当に応援されるかは個人の人間性ですね。」そう中村副社長は語る。私が取材させていただいた登利平アスリートクラブの選手たちは皆、社内からの応援が力になると語っていた。中村副社長の指導が浸透している証だと感じました。「選手に対して技術的な指導は特別行っていないですよ。」と笑顔で語り「細かいこと言われると選手は嫌でしょうしね。」と見守る姿勢が印象的です。社内の業績においても現在業績は順調で大きなテコ入れは必要なく守っていくことが大事としながらも、「うまくいかない時期も、すべての責任はトップにあり皆さんは最善を尽くしてくれている」という姿勢だ。「細かい指示をするよりも、自分自身の仕事への取り組みを見て理解してもらうこと。」を重視している。まさに教科書のような上司像を体現している中村副社長で、この言葉が本心なのは人柄から十分伝わりますが、それ故にもっと掘り出したくなってしまいました…。


競技スポーツは時に一般社会の常識や社会性から外れてしまうことがある。特に競争が激しく個人で、世界に挑むような競技において、尖った部分を持ち合わせていないのは不思議だなと。そんな疑問に「昔は私も我がままで、とがった選手でしたよ。」「競技をやめて指導する立場になって変わりました。」この答えに今の中村副社長が作られた背景が見えました。選手の気持ちがわかるからこそ多くは語らない。しかし「求められればいつでも答える準備はあります。」と情熱も十分です。社内での関りと同じように「人を変えることは出来ないので自分の考えを伝えていくこと。」を大事にしている。自身の考えを伝えるためにコミュニケーションにも気を使います。仕事柄、一斉に社内研修を行うことが難しいため個々への声掛けを大事にしている。現場に出た際には販売担当の人とのコミュニケーションも図る。多くを語らない副社長からの生の声は働く皆さんにとってとても大事なコミュニケーションツールでしょう。気さくさと深い懐を持ち合わせる中村副社長ですが、この大きな組織を支える上でもちろん苦労も多い。どんな苦労も乗り越え躍進できる秘訣は家庭内にあり、時に息詰まったり悩んだ時、奥様のアドバイスが支えとなっている。「女性目線のアドバイスや自分にはない考えのふとした一言に救われることが多い。社内の立場上怒られることも少なくなり妻の存在はとても貴重です。」と語った。素敵な夫婦関係で、そんな家庭だから仕事への活力も出てくるのでしょう。


中村副社長の後進育成の主軸には「どんなことも経験。経験こそ血となり肉となる」という言葉があり、世界陸上の経験について「当時のレベルは世界には程遠かった。しかし独特の空気感は味わったものにしか得られない経験だ。」と語った。自身の社会人としての経験と群馬県陸上界での指導経験、そしてトップアスリートとして世界を見た経験から今の中村副社長の人格が作られ、今日、登利平のトップとして会社を引っ張っている。


登利平代表として立場での振る舞いが求められる場面が多く、「ポジションが人格を作っていくものだ。」と語る中村副社長ですが、SAGA国スポでの4×100mリレー優勝の喜びを「あれは嬉しかったですね。」と語る笑顔は陸上競技への愛情にあふれており、監督という立場ではなく心からの笑顔が見られた瞬間でした。立場としての振る舞いを後進に見せながらも、時に喜びや奥様への感謝など人間味を覗かせる瞬間が中村副社長の一番の魅力だと感じます。中村副社長の後進育成の秘訣…自分の背中を見せること。その背中に登利平と群馬県陸上界の未来を背負いながらも、自然体で飾らない中村副社長の人柄が、のびのびと若い力を育成する。それが中村流後進育成の秘訣。