2000年01月02日

お知らせ

鈴木 宏明 ~継続力の源~

100M走は陸上競技の花形競技である。“たった10秒の勝負”に懸け走り続ける鈴木選手。

継続することが自身の強みだと語るその“継続力の源”に迫ります。陸上競技100M走はスピードと瞬発力が求められる競技です。スタートからゴールまでいかに速く走りぬくかという、陸上競技の中で最もシンプルであり「世界で1番早く走る人間」を決める象徴的な競技として注目を集め、オリンピックはこの100M走から始まったといわれています。鈴木選手のベスト記録は10秒41(大学3年生時)「中学3年生頃からの記録が出始めそれが楽しくて陸上にはまっていった。」30歳になった今日も「夏の練習の成果が秋に出るのが楽しみです。」ときれいな秋晴れの中笑顔で走り続ける姿は自分自身の可能性に心を躍らせた少年のようです。


Q|100M走をする楽しさと見る楽しさのポイントはどこですか?


「わかりやすくシンプルなところ、見るのもやる方もわかりやすいところです。」
100M走は競技場に足を運ばなくとも、多くの人がテレビを通して見たことがあるでしょう。100M走の魅力の一つであるスタート。独特の緊張感、大観衆が入ったスタジアムがスタートの瞬間は静まり返る、その中スタートラインに立つプレッシャーは計り知れない。寂静からの爆発的な疾走パフォーマンスに観客は目が離せず虜になる。鈴木選手の強みはスタートにあり、反射神経とスタートの姿勢が自身のストロングポイントだと語る。


Q|100M走におけるもっとも重要な要素は何ですか?


「スタート時はメンタルの部分が大きいです。スタートのやり直しや自分以外の要因に惑わされないように注意しています。」また「シンプルが故に難しい」と1つのミスがレース全体に影響する100m走の一瞬一瞬に懸けるこだわりを覗かせた。高校時代の恩師である安達監督(前橋育英)も鈴木選手のスタートについて「手をあれだけ広げた姿勢からのスタートを進められるところが彼の一番のポイント、瞬発力と身体のバネが素晴らしい」と評価する。高校時代の話を聞くと「とにかく純粋で素直で心がきれい」とお褒めの言葉があふれる「一方で言葉が足りないところがあるんだけどね」とネガティブな部分についても優しい表情で語る安達監督からは鈴木選手への愛情があふれていた。こんな風に温かく選手と接する監督と出会い、指導を受けた時間はかけがえのない時間であったと想像します。鈴木選手が陸上で最も興奮した瞬間を味わったのも高校時代であり、安達監督と陸上に打ち込んだ青春時代が目に浮かぶ。そして
もう一人鈴木選手の競技人生に大きく影響を与えた人物が現在の所属先である株式会社登利平の中村副社長である。高校時代に選抜され出場した国民体育大会(現国民スポーツ大会)で短距離種目のコーチを務めていたのが中村副社長であり、現在も練習メニューやフォームの確認にアドバイスを仰いでいる。自分の記録・タイムと向き合う日々は順風満帆なだけではない。


Q|競技をしていてつらい時期や辞めようと思ったことはありますか?


「何度かそういう時期はありましたが、結果が出るので辞めずにここまで来ました。」自身の記録が一番の原動力となっている。継続することが自身の強みだと語るその継続の源は陸上の楽しさを知った中学生から今までずっと自分自身の記録であった。

30歳という年齢は短距離界でまだまだやれると自信を覗かせ、21歳で出した自己ベストに迫る10.51を今期マークしている。「入社して以来自己ベストが出ていないので更新したい。そして日本選手権派遣標準記録10.34を目指したい。」と自分を超えるモチベーションも高い。安達監督は「後半の失速の部分に課題がある。もう一度後半の動きを見直すトレーニングをすることで伸びしろは十分にある」と熱く語る。鈴木選手は記録更新への手応えを聞くと「機材や道具シューズも進化しているのでチャンスを生かしたい。」と安達監督と対照的におどけた笑顔を見せた。そんな答えが鈴木選手らしい魅力の一つだと感じます。
鈴木選手は長い競技歴から「走ることの楽しさや日々の練習の積み重ねが無駄ではないこと」を走ることを通して表現する。競技キャリアも終盤にさしかかり1つ1つの走りが重要になってくる。キャリアの終わりを迎える日まで中学生時代感じた陸上競技の楽しさを十分に感じ自分自身の記録をモチベーションに走りぬけて欲しい。10年越しに追い求めた自己ベストが出た瞬間また鈴木選手は更なる記録を目指し走り続けるだろう。それが鈴木選手の“継続力の源“